昨今は、QTで作品集を管理しているディレクターの人がほとんどですが、
私が入社した当時は、D2テープに監督別の作品集を撮りためていて、
作品集の問い合わせがきたら、
D2テープからVHSに作品集を、そのまんまダビング(通称、まんDUB)するのが、
ポスプロの新人の最初の仕事でした。
かく言う私も、入社当時は、名だたるディレクターの方の作品集を
年間何百本と、まんDUBしていたのですが、
ダビングの際は、ドロップノイズが走らないか、絵の同期が乱れることはないか、
モニターから片時も目を離さずチェックしなければならないのですが、
いつしか、ノイズチェックの為というよりも、作品集の内容の方に釘付けになって、
作品集のダビングの時間が密かな楽しみになっていました。
とあるカメラマンの人の作品集の中に、
仲間由紀恵さんと竹内豊さんが出演している18年程前に流れていた、
auの夏のキャンペーン(?)のCMがあって、
ダビング中に、不覚にも涙を流したことがあります。
こんなCMに携われるようなエディターに早くなりたいなと
黒地に黄色でデカデカとOMNIBUS JAPANと書かれた、電磁波を遮断するジャンパーで
そっと涙をぬぐいながら、思っていました。
数多くの作品集を見ているうちに、
合成とか、絵のエフェクトに関する事より、
ここのカット点の編集うまいなとか、ここで引きのアングル入るとかしびれるなとか
自分は、オフライン編集を見るのが好きだということに気付きました。
今でも、それは変わってなくて、
仕事を始める際に、最初にオフラインを見るのですが、
本編集に関わることより、オフライン編集のことばかり注目してみる癖があります。
オフラインからオンラインにデータをもらう時には
EDL とか aaf といったファイルを使ってやりとりすることによって
オフライン編集でやったことを精密に同期することができるのですが、
この無機質な数字の羅列のデータの中に
隠されたメッセージを読み取ることができます。
○オフラインエディター M理さんの場合
その名を知らない人は、もう業界ではモグリ、
千葉が生んだ才色兼備であると、自負しております。(←自負の使いかた間違ってるけど!)
M理さんのデータは、一言で言うと頭脳明晰、一点の曇りもないと言えます。
すべての編集に強い意志が感じられます。
某、人気ドラマの女性医師の決まり文句
”わたし、失敗しないので!”
を地で行く人だと思っています。
余談ですが、いずみ的、大門未知子風の決まり文句は
”わたし、風邪ひかないので!”
です。
かっこいいんだか、悪いんだか微妙なところです。
○オフラインエディター S賀さんの場合
はじめて、S賀さんのオフラインを見た時、
”このエディターは50歳くらいだろうな…。”
と早押しクイズで最後まで問題聞かずに解答を発言したくらいのドヤ顔で監督に聞いてみたら、
・・・・・残念!!わたしより年下らしいです。
50歳くらいだろうなと思った理由は、
編集点の位置が
フィルム編集の人みたいだったからです。
と言っても、わたしはフィルム編集の時代をリアルタイムで経験はしてないのですが、
フィルムの編集時代は、
撮影されたネガフィルムからポジフィルムを作成し、映写機で映像を見ながら
ポジフィルムそのものを切断、接着して編集していたという話を聞いたことがあって、
一言で言うと、S賀さんの編集は
”ハサミで切ったような編集” だなと思います。
予定調和な流れを分断するような勢いがあって切れ味抜群です。
そんなS賀さんは西武ファンで、
セリーグ の試合とは勝ち負けが関係ないため、利害関係で揉めることはなく、
心置きなく野球の話ができ、シーズン中は頻繁にメールしています。
今シーズンは、9回裏に山崎康晃がでてきたところで
だいたい怖くてテレビを消していたのですが、
その後、15分以内に、携帯からメールの受信音が2連続で入る場合は
だいたい、S賀さんからの、”ヤスアキ打たれたリマインドメール”なので
スポナビをそっと閉じて寝ることにしています。
最後に余談ですが、ハサミ男 という傑作ミステリーがありますが、
時間が有り余っていたら一度読んでみてください。(意味深)
思った以上に話が長くなってしまいました。
続きはまたの機会に。
次回は、K池さん篇と、Nべちゃん篇です。