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大草原の小さな家

· どうでもいいこと

私が幼少の時に過ごした宮崎県は台風銀座と呼ばれるほど、

晩夏から秋にかけて、矢継ぎ早に台風がやってきます。

ある年、戦後最強クラスと呼ばれる大型で非常に強い台風が

九州に上陸する予報で、

台風の接近にともない、早々に学校の休校が発表されました。

気象衛星上の渦巻きの進路は、沖縄から着々と進路を

北上しています。

どの家も、窓に「米」の字のように、ガムデープを貼ることで

万が一、物が飛んできて窓が割れてしまっても

飛沫が飛び散らないようにする等の準備をし、

被害が大きくならないよう備えていました。

昼過ぎになるといよいよ、窓ガラスがガタガタと大きく揺れ始め、

打ち付ける雨の音も大きくなってきました。

すると、

祖父が買ったばかりの一眼レフのカメラを取り出してきて、

レインコートを羽織り、颯爽と出て行ってしまいました。

(いつカメラはじめたんだろ)

寝室では母が、旅行鞄に洋服をつめていて、

「高台に避難する!!!」と泣き叫んでいます。

続いて、父が

「海、見に行ってくるわ!」

と言って暴風雨の中、出て行ってしまいました。

”この家を守れるのは私しかいない”

そう決意を胸にした私の背後から

完全に忘れ去られていた寝起きの兄が、カップヌードルを手に現れ、

3分間その場に無言で存在していました。

ちなみに我が家は、健康を気遣う母の方針で

インスタント食品は禁止されていたのに、一体どこからそれを、、、、

ズルイ!!!

仏間の方では、祖母が唱える念仏のリフレインが、

優しく家中を包み込んでいます。

そう。劇場型と風来坊型が混在するわたしの家族を、

いつも静かに影で支えているのは祖母でした。

常に控え目で

学校であったことを話すと、面白そうに話を聞いてくれます。

そんな祖母には、言い聞かせるように言っていた口癖が3つあります。

「安物買いの銭失い」

「過ぎたるは及ばざるがごとし」

「若いうちにお金を使え

今まで意識したことはなかったけど、あらためて文字に起してみると、

自分はこの教えを忠実に守っていたことに気付かされます。

独立するにあたり、

機材をたくさん購入しましたが、

これは投資だと思い、お金に糸目をつけず、とにかく、質の良いものを買い揃えました。

もちろん、不相応で無意味なハイスペックは避けました。

おかげさまで、虫の息です。

餅が食べたいです。

話が逸れました。

もう1つ、祖母がずっと言っていたことがあって

”次、生まれ変わるなら、大草原の小さな のお父さんみたいな人と結婚したい”

です。大草原の小さな家とは、NHKで土曜の18時から放送されていたアメリカのファミリードラマで、

何度も再放送されている不朽の名作です。

祖母は、主人公ローラの父の、誠実で頼もしいチャールズに心を奪われていて、

放送が終わるたびに深いため息をついては、

”おじいちゃんと結婚するんじゃなかった。こんな人と結婚したかった”

と、まだ幼稚園だか小学生だかの孫に、思いの丈をぶつけていました。

そんな祖母ですが、

祖父が外出している間に、ヨーグルトパックをし、

孫のわたしに、家の外で祖父が帰ってこないか見張らせるほどには

祖父に対して乙女心を持っているようです。

”優しい人と結婚しなさい”

と言い続けた祖母は、晩年、病床に伏した祖父を看取り、

”やっとこれで、自由になれる!”

と喜んでいた矢先、

祖父の49日の法要中に、くも膜下出血でコロリと天国へと旅立ちました。

祖母のお葬式の時に、

「おじいさんのことが本当に好きだったから、あとを追うようにして旅立ったんだねぇ」

と親戚一同が口にしているのを耳にして、

天国から全否定している祖母の姿を想像してしまいます。

今日の昼はカップヌードルでも食べようと思います。

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