今から1年程前の大晦日、
お正月に食べるお刺身を買いに渋谷の東急フードショーに行った時のこと。
年末の喧騒と活気に溢れる食料品売り場は、年末年始の買い物に来たお客さんでごった返していました。
人混みと暖房とダウンコートのせいで、汗がふきだすほどに体温が上がり、
レストランフロアで冷たいものでも飲もうと、エレベーター前まで避難してきたら、
目の前に「西川のふとん 寝具年末大セール」の文字が。
わたしはずっと、M印の薄っぺらい羽毛ぶとんを使っていたのですが
部屋の寒さに無意識のうちに肩が縮こまり、目が覚めた瞬間が1日で1番クマがひどい状態だったので
高級羽毛ぶとんを検索しては
寝るだけのものに、こんなにお金をかけるのは勿体ないと
貧乏根性で何枚も上着を着込んで寝ていたのです。
これは何かの出会いかもしれないとエレベーターで8階の催事場へ向かいました。
エレベータを降りると、他の階の喧騒が嘘のように静まり返った雰囲気。
わたしのような若造(当時41歳)が足を踏み入れるには少し場違い感すら感じます。
フロアには実家の布団のような花柄の布団が所狭しと並んでおり、
どこから見ていけばよいか見当もつかないと、立ち尽くしていると
1人の年輩の女性店員の方が近づいてきました。
特に目星もなく、なんとなく羽毛布団を見にきた旨を伝えると、
それならばと、
立て板に水を流すごとく、淀みなく商品説明をし始めました。
これはグースダウンを使用していて、とっても軽いとか、
これはアイダーダックが5%入っていて希少なものだとか、
ダックはアヒルでグースは卵みたいなやつだっけ?
と関係ないことを考えながら話を聞いていましたが、
彼女の知識量の多さと、使用感に対するコメントに
一点の曇りもない刀身のような、気高さすら感じ始めました。
(ちょっと高いけどこれなら買えるかな、、、)と思っていた布団を見ていると
「あなたくらい若いならこれくらいで充分。もっと歳をとったらもっといい羽毛布団を買えばいいのよ」
と言われ、
この人は本物のプロだ。と確信しました。
わたしはエディターという仕事をしていますが、
いつの日か、エディターの仕事をやめる時がきて、
オリジン弁当などで働くことになったら、
「あの人の作るお弁当は本当に美味しい。」と言われるような人になりたいと
ずっと思っていて、
どんな仕事に就くことになっても、
その道のプロになりたいなと思っています。
羽毛布団の購入を決めたわたしに、
「布団シーツは、若い人がいくような店でオシャレなものを買うといいわ。」
と西川プロが言ったのですが、何となく展示場にあった1番シンプルなシーツを一緒に購入しました。
羽毛布団は、西川プロが言った通り、信じられないくらい軽くて、
1枚でとてもあたたくて、本当に買ってよかったなと思っています。
この思いを、西川のお店に投書しようと思いましたが、
どこに書いて良いかわからずじまいです。